中島敦『南洋通信』 大江健三郎『さようなら、私の本よ!』

本棚片付けながら、目についた本をパラパラ見返した。いずれも学生時代の本。もともとあまり読書しないけど、最近さらにしてないなぁ。

中島敦 『南洋通信』
中島は第2次世界大戦当時、日本語教科書の編纂をするため南洋庁(パラオ)に赴任していた。南洋庁とは、当時の日本が、委任統治領である南洋の島々を軍事的だけでなく文化的に支配するために置いた省庁。彼は、現地人とのかかわりや南洋の島々の旅を通じて気づく。
「土人の教科書編纂という仕事の、無意味さがはっきり判って来た。土人を幸福にしてやるには、もっともっと大事なことが沢山ある、教科書なんか、末の末の、実に小さいことだ。(中略)教科書などを、ホンノ少し上等にしてみたところで始まらないじゃないか」
彼が当時の大東亜共栄圏構想にどこまで疑問を持っていたか私はまだ理解していない。私は完全に反植民地主義の立場。それでも彼の感想を、今の自分になぞらえて部分的に共感する。構想自体に共感しないまま、末端の末端で何かをしたとしても始まらないってところ。考えてみれば当たり前だけど、経験を通じてということで強く共感。


大江健三郎 『さようなら、私の本よ!』
大江健三郎の高校時代からの親友であり、義兄でもある伊丹十三。彼の自殺をきっかけに、大江は、自分と伊丹十三をモチーフに『取り替え子』『憂い顔の童子』『さようなら、私の本よ!』という3部作を書く。「おかしな二人組(スウィードカップル)」の奇行。その最後の一節。
「われわれは静かに静かに動き始めなければならない」
"天才"の相方を失った大江の悲痛な叫び。共感という感覚を越えて、心に突き刺さるよ。


 イースターですね。ドイツで買ったチョコたべよ。

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